物価が上がっても金利が急上昇すれば物価連動債価格は下落する

水瀬ケンイチ

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米国のインフレ進行を受けて、今日も日経新聞で物価連動債がおすすめされています。

分散が効かない荒天相場、物価連動債や不動産が一手

「60/40ポートフォリオは死んだのか」。市場関係者の一部で最近、こんな議論が巻き起こっている。運用資産の6割を株式に、4割を一般的な債券に投じる伝統的な分散投資の有効性が低下しているのではないか、という疑念が高まっているのだ。フィデリティ投信によると、先進国株を6割・米国債を4割保有するポートフォリオのリターンは、今年1~8月実績がマイナス15%。リーマン・ショックによる金融危機で様々な資産


昨日の記事ではブリッジウォーター・アソシエーツのレベッカ・パターソン氏のコメントでしたが、今回はフィデリティ投信の重見吉徳マクロストラテジストが、スタグフレーションへの備えとして「運用資産の2割前後を物価連動債に振り向けてもよい」とコメントしたとのことです。

ご丁寧に、「iシェアーズ米国物価連動国債ETFなどを通じて、個人も気軽に投資できる」と銘柄紹介までされています。

しかし、データを見る限り、足元の物価連動債価格は下落中です。しかも、2022年に入ってから一気に急落しています。昨日のブログ記事と同じグラフですが、再度、引用させていただきます。

iShares TIPS Bond ETF (TIP)のチャート

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(SBI証券 外国株式情報より)

これだけインフレだインフレだと騒ぎ立てられて、実際にFRBもインフレ退治に躍起になっている状態なので、物価が上がると儲かるはずの物価連動債への投資はさぞかし儲かっているのだろうと私を含めた素人は思うわけです。

そんなイメージに反して、物価連動債は下落、というか急落中です。それが事実。

世の中には、もしかしたら、もしかしたらですが、物価連動債は物価「だけ」に反応する商品だという誤解があるのではないかと思います。

物価連動債も債券なので、金利の影響を受けます。債券は金利が上がると価格が下がり、金利が下がると価格は上がるという「シーソー」のような関係になっています。

15年以上前ですが、私も物価連動債という商品は物価の影響だけを受けるのか、物価と金利の両方の影響を受けるのか、わかっていませんでした。

本やネットをあれこれ調べたのに、なぜかどこにも答えが見つからず難儀していました。そのことをブログに書いたところ、ブログ読者のかたからコメントで情報ソースとともに教えていただきようやく、物価連動債は物価と金利の両方の影響を受けることを知りました。

前述のヘッジファンドや大手運用会社や日経記者のかたは、そんなことは百も承知で、今後の見通しとしてコメントしているのだと思いますが、もし、このブログ記事をお読みのかたで、物価連動債は物価が上がれば必ず儲かる商品だという印象を抱いているかたがいらっしゃったら、それはちょっと違います。

物価連動債は物価と金利の両方の影響を受ける。たとえ物価上昇中であっても、金利が急上昇すれば物価連動債といえども価格は下落する。

なぜかあまり出回っていない情報なので、今回のインフレ進行中の物価連動債価格の下落という事実が、よい教材になるといいなと思います。


物価連動国債の価格は、物価だけでなく金利の影響を受けるのか?

マネックス証券で、物価連動国債ファンドがノーロード化されました。その物価連動国債について、ブログのコメントで少し議論になりました。論点は、物価連動国債の価格は、金利の影響を受けるのか?という点です。物価連動国債は、その名のとおり、物価指数に連動して元金が変動する国債です。だからインフレヘッジができます。この説明は、どこにでも書いてあります。この説明からイメージすると、物価指数に完全連動する、物価指...


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Posted by水瀬ケンイチ