円安、円高どちらに転ぶかわからないので、どう転んでもあわてないようにする

水瀬ケンイチ

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最初に申し上げておきますが、私は「今後は円高になる」と考えているわけではありません。ただ、円安、円高どちらに転ぶかわからないので、どう転んでもあわてないようにしたいと考えています。その上でお読みください。

円相場が32年ぶりの円安だとかまびすしいです。

コラム:ドル/円の天井決める米利上げのゴール、155円も視野に=佐々木融氏

ドル/円相場はついに148円台まで上昇し、1990年8月以来32年ぶりの水準まで上がった。日米の物価上昇率の違いを考慮した実質的な水準では、すでに1970年代の1ドル=360円当時よりも円安水準となっている。


1ドル149円という、私も投資をはじめてからは経験したことがないような為替水準です。すると今度は、今後の円高を警戒する情報も出てきました。

円安の終わりが近い理由 1ドル=120円割れも?

今年、急激に進んだ円安が転換点を迎えています。今まで円安をもたらしていた理由がなくなるため、場合によっては数カ月のうちに、1ドル=120円割れまでの急激な円高もあり得ると私は見ています。そもそも、なぜ円安が進んだのでしょうか。重要なのは、ドルの上昇は対円だけではなく、世界中の通貨に対してだということです。ここまでの円安・ドル高水準は24年ぶりですが、対ドルではユーロも20年ぶり、英ポンドは37


日経新聞の記事では、今の円相場は投機的な円安・ドル高で、急激な円高への巻き戻しがあってもおかしくないと言っています。今の円安はドル独歩高であり「日本離れ」ではない。日本が巨額の対外資産を持つ国で、円が安全資産であることを背景にした、投機的な「リスクオンの円安」だとの見解です。

そうかもしれませんが、やや感覚的です。日本が巨額の対外資産を持っているのは何十年も前から変わっていません。さらに、「リスクオンの円安」という言葉も意味がよくわかりません。リスクオンとは、「リスクの高い資産への投資を増やすこと。または、そうした取引が好まれている地合い(相場の雰囲気)を指します」(わかりやすい用語集 解説:リスクオン(りすくおん) | 三井住友DSアセットマネジメントより)。世界的な下落相場でリスクオンという感覚がよくわかりません。記事の作者と私の感覚が違うのかもしれませんが、理屈の部分に数字がいっさい出てこないので、感覚的であるのは間違いないでしょう。

しかしながら、以下のモーニングスターの記事の理屈はちょっと強力です。

【アナリストの視点】20年保有では8割の月で為替差損発生の米ドル、インフレ率の高まりで円高の可能性も

「24年ぶりの円安・ドル高水準」や日本銀行による為替介入もあり、何かと話題となることが多い為替レート。


国際通貨研究所の公表値では、2022年9月15日時点の米ドル・円レートの143.57円に対し、同年8月末時点の購買力平価は88.29円と、乖離幅は60%を超えるとのこと。



購買力平価は長期の為替動向にしか使えず、短期的な為替予測に使うのは御法度と言われています。ただ、購買力平価に対して今の為替レートが円安方向に60%も乖離しているというのは異常値だといってよいと思います。

物価上昇率の違いとか中央銀行の政策の違いなど円安要因はあるのは事実ですが、今後、永久にこの円安水準が続くというのも考えにくいと思います。このまま世界の貿易商が日本で買って自国で売るだけで、濡れ手に粟のように儲けまくれるボーナスステージが永遠に続くとはちょっと思えません。

まあ、購買力平価は短期的な為替予測には使えないのですが、感覚論がはびこる予測不能な為替の世界において、購買力平価は個人的に一定程度の信頼を寄せています。

購買力平価は大正初期から成り立っていた

日経電子版に、金利と為替についての良記事が掲載されています。日経電子版 > ライフ > 家計 > 点検個人マネー高金利通貨はずっと上昇する? 外貨投資の誤解(1)詳しくは上記記事をご覧いただきたいのですが、無理矢理ひと言でまとめると、「高金利通貨は下落して日本円との金利差は消える」ということです。いわゆる購買力平価説です。それを長期のデータを用いて解説しています。一例ですが、これは日本債券と外国債券の総合リ...


くりかえしになりますが、私は「今後は円高になる」と考えているわけではありません。ただ、円安、円高どちらに転ぶかわからないので、どう転んでもあわてないような資産運用をしたいと考えています。

具体的に何をしているかといえば、為替リスクを織り込んでいるはずの各アセットクラスの円ベースの期待リターン・リスク・相関係数から計算した、全世界株式を中心としたポートフォリオ全体のリスクを、自分のリスク許容度の範囲内におさめています。要するに、所定の資産配分を守ってじっとしているだけです。

ですので、今後、円高になっても円安になってもどっちでもいいです。いま円安で儲かっており、為替リスクは悩ましいものですが、有望な海外のビジネス(株式や債券)に投資しようとすると勝手についてくるオマケだと思っています。

為替動向も株価動向も予測不能ですが、株式の期待リターンはプラスだと考えているので株価は上がってほしいです。(本音が出た😂)
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Posted by水瀬ケンイチ