円安相場で「今年すでに2億円利益」荒稼ぎするFX投資家の裏に必ず存在するもの

水瀬ケンイチ

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荒稼ぎするFX投資家がマネーポストで紹介されています。円安相場で「今年すでに2億円利益」とのこと。そんなに儲かるなら自分もやってみようと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

荒稼ぎするFX投資家たち 円安相場で「今年すでに2億円利益」、為替介入を利用する巧者も | マネーポストWEBマネーポストWEB

 32年ぶりの円安・ドル高が続く中、個人投資家の存在感が高まっている。金融先物取引業協会のデータによると、1月に355兆円だったFXのドル円取引額は、9月には単月として初めて1000兆円を突破。それを...


詳しくは上記マネーポストの記事をご覧いただきたいのですが、32年ぶりの円安・ドル高が続く中、個人投資家の存在感が高まっており、1月に355兆円だったFXのドル円取引額は、9月には単月として初めて1000兆円を突破。それを牽引したのが、“ミセス・ワタナベ”とも呼ばれる日本の個人投資家の存在とのこと。

記事では2億円儲けた投資家の「勝ちパターンが見えてきた」だの「1日300回を超えるスキャルピング」だのと一見すごそうなコメントが華々しく取り上げられていますが、読者のために伝えるべき大切なことを書き忘れています。

それは、為替への投資は「ゼロサム・ゲーム」であるということです。ゼロサム・ゲームとは、参加者の利益と損失を合計するとゼロになる仕組みのことです。

誰かの利益は誰かの損失でまかなわれている。為替市場の参加者の中で、短期間で2億円儲けた投資家がいるということは、その反対側に2億円損した投資家が「必ず」存在します。2億円の損失は1人ではなく、数多くの投資家に広く浅く分散されているかもしれません。

だいたいは円安傾向の雰囲気に誘われて為替市場に遅れて足を踏み入れた投資家が、こつこつドカンでやられて利益を献上しているものと思われますが、逆張りを狙って大きなショートポジションを取る投資家がマイナスのスワップでじりじり削られて利益を献上していることも考えられます。

この話をすると、「為替は累積経常収支分だけヘッジしきれない部分があるので厳密なゼロサムではない」といってゼロサム・ゲームではないことを主張する人が出てきます。

完璧なゼロサム・ゲームのモデルを研究する学者の意見であれば分からないでもないですが、投資家にとっては、期待リターンがプラスかマイナスかわからないということを言っているに過ぎません。期待リターンがマイナスであればなおさら投資に値しないというだけです。

いずれにしても、FXで大きく儲けた一部の投資家の利益は、損した投資家が負担している構造にあることは覚えておきたい。

これに対して、株式や債券は長期で見ればプラスの期待リターンが見込める「プラスサム・ゲーム」の構造にあります。バイ&ホールドでも利益が得られるのは期待リターンがプラスの資産クラスだけです。

ふだん株式や債券のインデックス投資でのんびり運用しているような長期投資家が、上記記事のような情報を見て、スケベ心を出してFXのトレードに「手を出してみようか」という状態が最も他人に利益を献上してしまう状況のように思います。ゆめゆめ忘れることなかれ。

なお、本ブログ記事はすべて20年前の自分に向けて言っています…(泣)


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Posted by水瀬ケンイチ