非課税だと思われているiDeCoの受け取り時課税に関する良記事
水瀬ケンイチ

AERA dot.(アエラドット)に「iDeCo」(個人型確定拠出年金)の受け取り時の課税についてまとめられた良記事があったので取り上げます。
iDeCoの「受取時」に課税される人・されない人の違いをズバリ!〈AERA〉
節税効果が高く運用益が「非課税」といわれるiDeCo(個人型確定拠出年金)。実は、退職金や年金が高額な人は最後に非課税で受け取れない場合があることをご...
上記記事の趣旨は、iDeCoは積み立て年数が短い、勤続年数が短い、退職金が多い人は税金が発生しやすく、積み立て年数が長い、勤続年数が長い、退職金が少ない人は税金が発生しにくいということ。
え?iDeCoはすべて非課税なんじゃないの? と思われた方がいらっしゃるかもしれません。
通り一遍の浅いことしか書かれていない投資本や新聞などでは、iDeCoは①掛金が全額所得控除、②運用時非課税、③受け取り時に税制優遇ありと「3つのメリット」があるように説明されることが多いです。しかし、③受け取り時に税制優遇ありというのをメリットと呼ぶのは少々微妙です。
類似の非課税制度である一般NISAやつみたてNISAは、受け取り時(引き出す時)に税金などかかりません。自分のお金を非課税で運用して受け取るのに税金がかからないのは当たり前の話だと思います。
ところが、iDeCoでは基本、受け取り時に課税される仕組みになっています。それを緩和するために、退職所得控除や公的年金等控除があるのですが、これがメリットであるかのように説明されることが多いです。
そもそも、自分のお金を非課税運用したにもかかわらず引き出すのに税金がかかること自体は、仕組み上の大きなデメリットです。これを運用時非課税といえるのか。退職所得控除や公的年金等控除は、条件に当てはまれば税金がかからない「場合がある」という程度のデメリット軽減策にすぎないと私は思います。
上記のAERA dot.(アエラドット)の元記事である「AERA Money」では、iDeCoのことを非課税制度とは呼ばず、あえて「非課税になる可能性がある」という表現を貫いているそうです。心憎いこだわりの表現で、大変良いと思います。
ちなみに、拙著「お金は寝かせて増やしなさい」(水瀬ケンイチ著)でも、iDeCoの③受け取り時の税制優遇については、「これを優遇措置というのは少々微妙ですが、受け取り方によっては有利に受け取ることが可能です」と説明しています。
一般NISAやつみたてNISAと並べて、投資の非課税制度として紹介されることが多いiDeCoですが、正式名称は個人型確定拠出年金であり、仕組みはその名のとおり年金です。60歳まで引き出しができないという制約は、まさに年金ならではです。受け取り時に税金がかかり、それを軽減する退職所得控除や公的年金等控除の枠を消費するのもiDeCoが年金だからです。
積み立て年数、勤続年数、退職金は人によって大きく状況が異なることです。ご自身がiDeCoの受け取りをする頃、積み立て年数、勤続年数、退職金がどうなりそうなのか、年金や退職金をどのような形で受け取るのか、退職所得控除や公的年金等控除の枠は何にどれくらいあてがうことができるのか、シミュレーションしておくと良いと思います。
世の中の詳しいiDeCo解説本にはこのあたりが手厚く解説されています。というより、色々なケースがありすぎてどうしてもページ数が増えてしまうのだと思います。
「人生100年時代の年金・イデコ・NISA戦略」(田村正之著)では7ページにわたり解説されています。最近読んだ「AERA Money 2022秋冬号」には非課税で受け取るための方法がムック3ページにわたって解説されていました。
年金や退職金の受け取り方はただでさえ複雑なのに加えて、私の場合は早期リタイアをしようとしているので、更に複雑になりそうです。FPさんに有料相談してもいいかなと思っています。

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