新NISAでは成長投資枠が金融機関の「商売枠」になるでしょうが、選ぶのは投資家です
水瀬ケンイチ

「新NISAで成長投資枠が金融機関の『商売枠』に? よぎる本末転倒の懸念」という記事が掲載されています。
詳しくは上記記事をご覧いただきたいのですが、無理やり要点をまとめると、2024年開始予定の新しいNISAでは、金融機関が「成長投資枠」で高コストなアクティブファンドを積極的に販売してくることを懸念するという内容でした。
これは懸念でも何でもなく、ほぼ確実にそうなるだろうと私は見ています。
現在のつみたてNISAの対象商品は、金融庁が厳選した「長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託」だけとなっています。おかげで、低コストなインデックスファンドがほとんどとなっています。新しいNISAでは「つみたて投資枠」として、引き続き同じ対象商品に投資できる予定です。
現在の一般NISAの対象商品は、個別株・ETF・投資信託・ETFなど幅広くなっています。ここでは低コストなインデックスファンド以外にも、様々な高コスト商品が含まれます。
2024年からの「新しいNISA」では、つみたてNISAの後継の「つみたて投資枠」と、一般NISAの後継の「成長投資枠」が2つセットの非課税口座になります。
金融機関としては手数料が少ししか取れないインデックスファンドよりも、できれば手数料をたっぷり取れるアクティブファンドを売れる「成長投資枠」でたくさん売りたいはずです。金融機関は慈善事業ではなく営利企業なので、これは仕方のないことだと思います。
ところが、です。
自動車や家電やホテルのサービスなど、ふつうの商品・サービスは料金が高いものほど良いものである可能性が高いのですが、金融商品だけは、手数料が高いからといってリターンが高いとは限らないという際立った特徴があります。混乱しますよね。投資の過去の実績データや調査結果を見慣れていないうちは「そんなバカな!?」と感じるはずです。
商品・サービスといった付加価値にお金を払うのではなく、お金(資産)を増やすためにお金(手数料)を払うという矛盾した構図がその原因です。むしろ、投資のリターンは不確実であるのに対して、コストは確実なマイナスです。コストを抑えることでリターンを高めることすらできる構図になっています。
だから、新しいNISAにおいても投資家側が少しだけ賢くなって、金融機関のおすすめ商品を買うのではなく、「自分で」商品を選ぶというスタンスがますます重要になります。
投資の未経験者や初心者にそんなことできるわけないと思われるかもしれませんが、しくみはそれほど難しいものではないと思います。まともな投資本を1冊読んで、現在もある「つみたてNISA」のベストファンドを「新しいNISA」でもつみたて投資していけばいいだけです。
「成長投資枠は人生でつみたてられない時のキャッチアップ枠。つみたて枠の商品のキャッチアップをサポートするという考え方だ」と金融庁が自ら言っています(出所:【追記あり】NISA拡充・恒久化の内容が確定、金融庁でのブロガー座談会速報)。
新しいNISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠は同じインデックスファンドに投資するつもりです。少なくとも、成長投資枠で高コストなアクティブファンドをわざわざ選び分ける必要はないと私は思います。
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