個人の資産配分に新聞は口出し無用
水瀬ケンイチ

日本経済新聞に「金融立国、諦めますか? 家計2000兆円じわり国外流出」という挑戦的なタイトルの記事が掲載されています。
詳しくは上記記事をご覧いただきたいのですが、要点を無理やりまとめると、NISAが抜本拡充されると個人の金融資産は海外に流出するので、このままなら金融立国を実現するチャンスは二度と訪れないとのこと。
上記日経記事には何度も金融立国という言葉が登場します。金融立国という言葉がお好きなようですが、たとえば、金融シティを擁する英国はまさに金融立国そのものです。
その英国では、投資家の国内株(英国株)への投資比率は26%にすぎないというデータがあります。ホームカントリーバイアスにとらわれない資産配分で、資産運用が行われていることがわかります。ちなみに、日本の投資家の国内株(日本株)への投資比率は55%あり、ホームカントリーバイアスが強く出ています。
上記データを見るだけでも、国民の個人資産を国内株に投資させることが、金融立国の条件ではないことがわかります。
このブログでも何度か書いていますが、日本人投資家の金融資産が海外に流れるのは、NISAうんぬんではなく、そもそも日本市場のリターンが海外市場よりも低かったからです。日本のリターンが上がれば、世界の株式時価総額にしめる日本の割合も上がるでしょう。
日経記事では、日本の政府と金融機関に金融システム改革を求めており、それ自体は大いに結構なことです。ただ、投資家目線ではないように思います。個人は自分の資産形成のために投資をするのであって、国のためではありません。
金融システムがどんなに進歩したとしても、金融商品の価格変動リスクは投資家がすべて背負います。金融システムや金融機関が投資家の代わりにリスクを背負ってくれることはない。その代わり、リターンもほぼすべて投資家のものになる。これがいわゆる「自己責任の原則」です。
そのリスクを制御するために、最も重要な要素が資産配分です。資産配分で、保有資産の値動きの8~9割が説明できるという研究結果が洋の東西を問わず出ています。
海外比率を含め、自己責任で投資する個人の資産配分に、新聞の口出しなど無用です。
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