直近1年で全世界株式が米国株式を上回った傾向はまだ続く可能性あり!?
水瀬ケンイチ

モーニングスターに「過去1年では『S&P500』を上回る『eMAXIS Slim全世界株式』が残高1兆円にカウントダウン」という記事が掲載されています。
詳しくは上記記事をご覧いただきたいのですが、趣旨をむりやりまとめると、過去1年間のパフォーマンスで「オール・カントリー」が「S&P500」を上回った傾向はまだ続く可能性があり、eMAXIS Slimシリーズ2本目の1兆円大台乗せになりそうとのこと。
比較的新しい投資インフルエンサーたちのおかげで、米国株式の「S&P500」に投資することがインデックス投資だと思い込んでいる人が多いようです。悪くはないのですが、本来は全世界の株式時価総額比率のとおりに投資する「オール・カントリー」の方がインデックス投資としては王道です。
米国人著者が米国人のために書いたインデックス投資の古典的名著「ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第12版>」(バートン・マルキール著)や「敗者のゲーム[原著第8版]」(チャールズ・エリス著)でも国際分散投資がすすめられています。
米国人著者たちですら、米国だけでなく米国以外にも国際分散投資すべきだと、今でも主張しています。米国株だけを保有するよりも米国株以外と組み合わせた方が(近年小さくなってきたとはいえ)分散効果が働き、リスクあたりのリターンが高くなるからです。
なぜ日本の個人投資家だけが米国株一本でよいという話になるのか、いささか不思議です。
市場環境によってオール・カントリーが優位な時とS&P500が優位な時があり、オール・カントリーが目立って優位だった期間は、1988年1月~1990年2月、1993年12月~1994年12月、2015年1月~2017年11月、2018年12月~2020年4月、そして、2022年4月以降。それ以外の期間では、概ねS&P500のパフォーマンスが優位になっているという実績が強力なのだと思います。
特に、ここ数年のS&P500は飛ぶ鳥を落とす勢いの高パフォーマンスが続いていたので、最近投資をはじめた人はこれが一番上がる投資先に違いないと思ってしまうことは無理もないことだと思います。
ただ、前述のように、過去にはオール・カントリーが優位な時とS&P500が優位な時があったように、今後もS&P500が優位になり続けるとは限りません。
上記モーニングスターの記事では「2022年の急速な利上げによって、米国の成長企業の高過ぎる水準になってしまったバリュエーション(株価評価)があぶり出され、米国株価の上昇の力が弱くなってしまった」と分析しており、現に直近1年ではオール・カントリーの方が優位になりつつあります。
過去1年間(23年1月末現在)のトータルリターンは、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の3.85%に対し、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」は5.01%と上回っています。

心配しなくても、オール・カントリーの中にはS&P500の構成銘柄がしっかり含まれています。オール・カントリーとS&P500の構成上位銘柄はほとんど同じなくらいです。
そもそもインデックス投資は、市場全体にまるごと投資するものであり、時期により上がる市場を「当てに行く」という投資法ではないです。手間をかけずにゆったりとバイ&ホールドを続けるのであれば、全世界株式オール・カントリーへの投資の方がスタンダードだと私は考えます。
※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いします。
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