下げ相場では無責任な掌返しをする人やアカウントをしっかりと見極める
水瀬ケンイチ

直近の数パーセントの下げで生きるの死ぬのと大騒ぎのSNSを見ていてあらためて思うのが、「投資は自分のリスク許容度の範囲内で」という大原則です。
上げ相場では「インデックス投資は預金感覚」「勉強なしでもとにかく投資デビュー」などとのたまい他人に安易にリスクを取らせる投資を煽る人やアカウントがたくさん出てきます。具体的なリスク管理について何も言及せずに、勉強なしでもとにかく始めることが重要だとか、インデックスファンドを積み立てるだけで何も考えなくてよいとか、耳ざわりがよいだけの無責任な情報が耳目を集めます。
しかしながら、いざ下げ相場を迎えると自分の主張は引っ込めて、損失を抱えた人に向けて「苦しいよね」「死なないでください」などと一見寄り添っているかのようなやさしげな投稿をする。酷いケースでは「私はもう売却したのでノーダメージ」などと掌返しをするケースもあり、平時の主張とセットであわせ読むととても醜悪です。
上げ相場、下げ相場に関係なく、投資は自分のリスク許容度の範囲内で行うべきであることに変わりはなく、その手順においては、気合いや根性のような精神論ではなく「数字」で保有資産全体のリスク(ボラティリティ)を管理することが必要です。
保有資産全体のリスク(ボラティリティ)は標準偏差という「数字」で把握して、年間でその2~3倍の損失に自分が耐えられるかどうかをベースに資産配分を決めます。ネットには保有資産全体の標準偏差を計算する無料のツールがいくらでもあります。
それでも、もし下げ相場で夜も眠れないほど不安ならリスク許容度の見積もりを誤ったということですが、次回までに厳し目に修正すればいい。日々のニュースを追いかけることよりも遥かに大切なことだと思います。
保有資産全体のリスクを下げる方法は、投資総額を抑えること、もしくは、資産配分における株式等リスク資産比率を下げて固定することです。シンプルでコストもかかりません。やるべきことは共感や同情集めではなく、次回の下げ相場への備えです。
本当はリスク許容度の見直しは、上げ相場の時に「こそ」やるべき(利確になる)ですが、長い目でみれば下げ相場(損切りになる)であったとしても、気づいた時にさっさとやって将来に備えるのがベターだと私は思います。
そして、ふだん耳ざわりの良いことばかり言いながら、下げ相場では無責任な掌返しをするような人やアカウントをしっかりと見極め、次回以降の相場で参考にする・しないを決めておくこと。
長い投資家人生のなかでは、失敗したと後悔することもあると思いますが、転んでもただでは起きない心構えが、お金だけではない経験の積み重ねになるのだと私は思います。
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