三菱UFJ国際投信、信託報酬の競合ファンド対抗値下げに関する公式コメントを発表

水瀬ケンイチ

eMAXISSlim20210414.jpg


「eMAXI Slim」シリーズを運用する三菱UFJ国際投信から「『eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)』シリーズの基本理念について」というお知らせが出ています。

三菱UFJ国際投信 お知らせ
2023/04/13 『eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)』シリーズの基本理念について

先日の「eMAXIS Slim”オルカン“、Tracers対抗の信託報酬引き下げは行わず」という報道に、公式のコメントが出た形です。

上記のお知らせによると、「eMAXI Slim」シリーズではファンドの計理業務、目論見書・運用報告書の作成にかかる費用、対象指数(インデックス)の商標使用料(ライセンスフィー)などを信託報酬に含めているところ、競合の類似ファンドでは信託報酬とは別にファンドに請求しているところがあるとのこと。信託報酬率のみではなく、海外でも一般的な「総経費率」も併せて伝えることで、顧客の視点に立った開示を進めていきたいとあります。

類似ファンドとは、どう見ても、日興アセットマネジメントの「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」のことと思われます。eMAXIS Slimでは信託報酬内に含む諸費用のいくつかを、Tracersは含まないので、信託報酬率の数字だけで対抗値下げはできないということ。インデックスの使用料はけっこう高いらしいですし。

さて、投資家にとって重要なのは、「eMAXI Slim」シリーズの「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」というコンセプトは今後どうなるのかということです。競合ファンドへの対抗値下げの旗は降ろさないと報道にありましたが、信託報酬だけでは単純比較できないケースが出てきたとなると、今後は総経費率で、業界最低水準の運用コストを目指し続けるということでしょうか。

気になったので、三菱UFJ国際投信に電話で問い合わせて確認しました。回答の趣旨は以下のとおり。

・競合ファンドの対抗値下げは、総経費率か信託報酬の二択ではなく総合的に判断する。
・総経費率の開示を進めていく。先行していくつかのファンドで運用報告書だけでなく目論見書にも総経費率を掲載しはじめている。

個人的には、信託報酬は事前に確定しているので比較しやすいが、運用会社によって内訳が異なる場合がある。総経費率は運用会社による内訳の違いはないが、毎年変動する上に実績ベースの前年度の数字となる。一長一短なのでケース・バイ・ケースで判断ということかなと理解しました。

当ブログでもインデックスファンドの比較記事に関しては、信託報酬だけでなく、実質コスト(上記の用語に合わせると総経費率のこと)、インデックスとの差異、1年リターン、3年リターン(年率)、5年リターン(年率)という複数項目の合計点で、かつ定期的(四半期ごと)に比較を行っています。そして、第1期運用報告書が出るまでは「参考」扱いです。

運用会社にとっても、競合ファンドへの対抗値下げの判断は複数項目で行うというのが現実的なのでしょう。

今回、信託報酬の内訳が運用会社によって異なるという事実にフォーカスが当たりましたが、投資信託の手数料開示の項目は、投信協会などが音頭を取って業界で統一してほしいですね。

手数料まわりにあまりマニアックな知識を要するようだと、2024年から始まる新しいNISAに向けてこれから増えていくであろう初心者投資家が迷ってしまうので。
関連記事




投資判断は自己責任でお願いします。当ブログの情報により投資判断を誤ったとしても、管理人は責任を負えません。また、当ブログ内容の無断転載を禁じます。

Posted by水瀬ケンイチ