アクティブファンドのベンチマークが配当込み指数なのか配当除く指数なのかで勝率が全然違う
水瀬ケンイチ

アクティブファンドはベンチマークを上回ることを目指す運用をしますが、そのベンチマークが配当込み指数なのか配当除く指数なのかで勝率が全然違うという情報です。
国内株式ファンド、先進国株式ファンド、新興国株式ファンドの全てにおいて、「配当込み」を上回ったファンドの割合は、「配当除く」とした場合の割合から急減した。「配当込み」を上回った割合は、国内株式ファンドが18.2%(「配当除く」を上回った割合は87.3%)、先進国株式ファンドは3.6%(同17.9%)、新興国株式ファンドは25.8%(同75.8%)となった。
(市場平均を上回る株式型ファンドの割合、対「配当込み」では急減| ウエルスアドバイザー)
インデックスファンドにおいても同じことが言えます。日本の投信慣習だかなんだか分かりませんが、開示情報では、インデックスファンドのベンチマークが、配当を含むのか、もしくは除くのかについて、曖昧なまま表記することがまかり通ってきました。
言うまでもなく、株式インデックスファンドの原資産である株式は、実際には企業から配当が支払われます。なのに、インデックスファンドのベンチマークが「配当除く」インデックス連動だと、どうなるか。ダラダラと非効率な運用をしていても、昨今は配当利回りが2~3%かそれ以上ありますので、その分お金が余るわけです。そうです、ベンチマークが「配当除く」インデックスのインデックスファンドは、黙っていてもベンチマークから上ブレるものなのです。
私は定期的にインデックスファンドの比較を行っていますが、原資産である企業の株式から配当が出てくるにもかかわらずベンチマークに「配当除く」インデックスが設定されているインデックスファンドはインデックスとの差異がプラスに大きく出るので、インデックスとの連動を目指すインデックスファンドとして馴染まないため評価を下げています。これは2015年からずっと言っていることです。
アクティブファンドにおいても、「インデックスを上回った」と喧伝しているファンドが、じつはベンチマークが配当除くインデックスだったら、その評価は高いゲタをはいていると言っていいでしょう。上記のウエルスアドバイザーのデータはそれを裏付けるものとなっています。
運用会社では改善の動きも見られます。三菱UFJ国際投信が2019年に「eMAXIS」「eMAXIS Slim」「つみたてんとう」シリーズ等のインデックスファンドのベンチマークを「配当込み指数」へ変更するという荒業を実現してくれましたが、三井住友DSアセットマネジメントが2023年4月から、「iFree」シリーズを運用する大和アセットマネジメントが2023年半ばに、「My SMT」シリーズを運用する三井住友トラスト・アセットマネジメントも2023年半ばにベンチマークを「配当込み指数」へ変更する等、フェアなベンチマーク設定への変更を続々発表しています。
どんなにすごい運用をしているファンドでも、ファンドの価格変動リスクは100%投資家が負います。運用会社もファンドマネージャーも損失は1円も肩代わりしてくれません。リスクを投資家が負う代わりに、リターンもほぼすべて投資家が得られる。それが自己責任の原則です。
だからこそ、インデックス、アクティブにかかわらず、運用会社の投資家への情報開示はゲタなどはかずに正々堂々やってほしいと思います。
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