「Tracersオールカントリー」をめぐる報道が盛り上がってきた
水瀬ケンイチ

新登場の「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」(Tracersオールカントリー)をめぐる報道が盛り上がってきました。日本経済新聞に「『超低コスト投信』が続々 新NISA争奪の前哨戦」という記事が掲載されています。
詳しくは上記記事をご覧いただきたいのですが、無理やりまとめると、2024年の新しいNISA開始を前にインデックスファンドの運用コストで超低コスト競争が起こっており、「Slim」と「たわら」が最安を競う中、信託報酬半額の「Tracers」が登場したものの、信託報酬に含む費用の範囲に違いがあるので「総経費率」を確認するべきという趣旨でした。
その後、業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続けると表明している「Slim」が追随しない方針を発表し、勝負の行方は決算後に明らかになる総経費率次第となったことは、当ブログでもウォッチしていたところです(該当記事)。
もう1件、「Tracers」の登場をすっぱ抜いたITmediaが「ネット専用『Tracersオールカントリー』は実質コスト最安を目ざすのか? 日興AMに聞く」という記事を掲載しています。
詳しくは上記記事をご覧いただきたいのですが、無理やりまとめると、日興アセットマネジメント商品開発部長兼ETFビジネス開発部長への取材で、実際のところコスト最安を目指すのか?という質問に対して、「とにかくコスト削減を目指す」という回答があったという趣旨です。
「とにかくコスト削減を目指す。信託報酬0.05775%+その他上限0.1%が上限となるのは事実だが、それはあくまで上限だ。さまざまな工夫によってどこまで低くできるかだと思う。指数利用料は、一般的には固定と率の組み合わせが多い。規模が拡大することで、コストが下がる部分もある」とのこと。
「コスト最安」を目指す、ではなく、「コスト削減」を目指す、ですか。
あらかじめ確定している信託報酬と違い、総経費率は変動するのものであり決算してみないとわからないので、コスト最安を目指せる水準になるかどうかは運用会社の当の本人にもまだわからないといったところでしょう。
もし仮に、信託報酬以外の「その他費用」が上限の0.1%だった場合、総経費率は0.15775%となり、コスト最安とは言えなさそうです。純資産残高の拡大によりコストが下がる部分があるという理屈はそのとおりですが、純資産残高が増えるかどうかは今後の投資家の動向次第です。
なお、設定日である2023年4月26日付の純資産残高は、0.09億円(900万円)。まずは決算に向けて純資産残高を積み上げ、コスト削減を目指すフェーズが続きそうです。競合ファンドはたくさんあるので、投資家としてはあわてて飛びつく必要はなく、総経費率が明らかになるまでは様子見が無難だと私は思います。
それにしても、以前にも書いたとおり、投資信託の手数料開示の項目は、投信協会などが音頭を取って業界で統一してほしい。手数料まわりにあまりマニアックな知識を要するようだと、今後、新しいNISA開始に向けて増えていくであろう投資初心者が迷ってしまうので。
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