資金純流出入額ランキングでインデックスファンドが上位独占。アクティブファンドにも投資妙味がという説明は…?
水瀬ケンイチ

過去1年間の資金純流出入額ランキングで、上位4位までをインデックスファンドが独占したとのこと。
上記記事によると、2023年2月末時点の過去1年間の資金純流出入額ランキングは以下のとおりです。
1位 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 7346億円
2位 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 4400億円
3位 楽天・全米株式インデックス・ファンド 2924億円
4位 SBI・V・S&P500インデックス・ファンド 2850億円
5位 アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし) 2373億円
6位 インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型) 2287億円
7位 ダイワJ-REITオープン(毎月決算型) 1545億円
8位 アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース毎月決算型(為替ヘッジなし) 1494億円
9位 フィデリティ・世界割安成長株投信Bコース(為替ヘッジなし) 1296億円
10位 J-REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型) 1282億円
eMAXIS Slimシリーズの米国株と全世界株でワンツーフィニッシュです。つみたてNISAの対象で、つみたて投資家の支持を集めている印象。
上記記事では、アクティブ型併用に妙味があるというようなことも書かれていました。ただ、記事のランキング表にある1年リターン、3年リターンを見ると、とてもそうは思えません。
アクティブファンドでは1位(ランキングでは5位)の「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)」は、1年リターンがたった0.9%しかなく、3年リターンは年率17.5%ありますが、同じ資産クラスの「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の1年リターンが8.6%、3年リターンは年率20.1%なので、単純なインデックスファンドに劣っています。
上記データを見る限りにおいては、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)」には投資妙味の「と」の字も見い出せません。
アクティブファンドで2位(ランキングでは6位)の「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」は、1年リターンが22.8%と高リターンを叩き出していますが、3年リターンは年率16.6%で、同じ資産クラスの「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の3年リターンとまったく同じです。
上記データを見る限りにおいては、インベスコの方には直近1年限定で投資妙味があったものの、このファンドを3年前に見つけてずっと投資し続けていたとしたら、単純なインデックスファンドとまったく同じリターンしか得られなかったということになります。
インデックスを上回り続ける(恒常的に上回る)ことが難しいという教訓こそが見て取れます。
未来のことはわかりませんが、記事で「アクティブ併用に妙味も」という根拠は、少なくとも掲載されたデータには現れていない。記事にあった「これからは企業間の優勝劣敗がより鮮明になっていく可能性が高い。だとすれば全体に投資するだけでなく、アクティブ型投信を組み合わせた方がリターンの向上が期待できるだろう」という説明は定量的ではなく定性的で、記者の希望的観測でしかないのではないか。
ただ、上記記事のロジックはおかしいとは思うものの、インデックスを上回るアクティブファンドが少ないながらも「常に」存在するのは事実です。「アクティブファンドはインデックスを上回ることはできない」とカジュアルに断言する人がたまにいますが、それは明確な誤りです。
アクティブファンドの7~8割がインデックスを上回れないということは、裏を返せば、アクティブファンドの2~3割はインデックスを上回っているという証拠でもあります(関連記事)。
由々しき問題は、インデックス上回るアクティブファンドの顔ぶれが毎年変わってしまうということ。残念ながら、上記インベスコのファンドを3年保有したらインデックスと同じになってしまったことというデータもそれを裏付けてしまっています。
アクティブファンドには、ぜひインデックスを上回り続ける(恒常的に上回る)ことを目指してほしいと思います。世の中にアクティブに運用する存在は必要ですし、なにより投資信託の名前のとおり、投資家が信じて託せるように。
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