積み立て投資をはじめてイライラしてしまう理由
水瀬ケンイチ

積み立て投資を始めてから夫の精神が不安定だというご夫婦の話がファイナンシャルフィールドに掲載されています。
50代に差し掛かる2人世帯で、家や車のローン返済、子どもの教育費がようやくひと段落つき、自分たちの老後のための資産形成として毎月5万円ほど積み立て投資をすることにしたとのこと。積み立てが金額指定であるところを見ると、おそらく投資信託を積み立てているのだと推察されます。
最初は不安もあったものの、じょじょに増えていく積立金額を見て、現在では前向きになったといいますが、最近は旦那様の様子がおかしい。
「積み立て投資をはじめてから、ずっと投資関連のニュースに釘付けになっているんです。よいニュースの時は上機嫌になるのですが、悪いニュースが流れてくるととたんに不機嫌になってしまいます。新聞やニュースサイトを見てため息をついたり、イライラしたりするから私も不安になってしまいます」
旦那様は相場にふりまわされて一喜一憂してしまっているのだと思われます。
記事では以下の3点をアドバイスしています。
1. 長期的な視点を持つ: 短期的な変動に一喜一憂せず、将来の資産形成に焦点を当てる。
2. リスク管理を徹底する: 投資する際は、リスクをしっかりと管理し、自身のリスク許容度に合った投資を行う。
3. 情報をうまく取り入れる: 日々のニュースは、短期的な変動に影響されやすいため、必要な情報だけを取り入れ、過度な情報に振り回されないよう心掛ける。
すべてよいアドバイスだと思いますが、重要度からいって「リスク管理の徹底」が真っ先に上がって然りだと考えます。あとの2つは心掛けで、いわば精神論みたいなものだからです(精神論も大切なのですが)。
相場状況によってイライラしたり、夜ぐっすり眠れなくなってしまうというのは、典型的なリスクの取り過ぎ状態であるといえます。
自分のリスク許容度(年間何円 or 何%までの損失だったら耐えられるか)から決めるべき投資金額と資産配分をあやふやにしたまま、投資信託を積み立てるという行動をはじめてしまうと、だんだん投資金額が大きくなってくるにしたがって、このようなことになりがちです。本来やるべきであった積み立て投資の準備ができていないのです。
何も考えずにとにかく投資をはじめてしまうことをすすめる有識者も枚挙に暇がありませんが、自分はちゃっかり知識を持っているにもかかわらず他人にはそれが不要だというのは、とんでもなく無責任な意見だと私は考えます。せめて本1冊くらい読んで備えるべき。
記事のご夫婦の場合、対応としては、投資金額自体を減らしたり(積み立てを一時停止する、積立金額を減らす等)、資産配分における株式等リスク資産の割合を減らして債券・現金の割合を増やすことで、保有資産全体のリスクを下げることができます。イライラすることなく、積み立て投資を続けられる快適なリスク水準がうまく見つかるといいなあと思います。
当ブログでは何度も出てくるフレーズですが、投資はリスクを「数字」で把握して、自分のリスク許容度の範囲内で。
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