【マスコミ調査】公的年金の2023年度第2四半期は微減にもかかわらず報道レベルは向上

水瀬ケンイチ

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公的年金の積立準備金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は2023年11月2日に、2023年度第2四半期運用実績を公開しました。


◆2023年度第2四半期(2023年7月~9月)
収益率: -0.31%
収益額: -0.7兆円
運用資産額: 219.3兆円(2023年9月末)

◆市場運用開始以降(2001年度~2023年度第2四半期)
収益率: +3.91%(年率)
収益額: +126.7兆円(累積)

簡単にいえば、2023年度第2四半期は「微減」です。前四半期までは絶好調でしたが、ここへ来てわずかにマイナスとなりました。3ヶ月で収益率は -0.31%、収益額は -0.7兆円という結果でした。一方で累積収益額は+126.7兆円、収益率も+3.91%(年率)とこちらは「絶好調」で推移しているというのが全体像です。(なお、GPIFの運用目標は中期で年率賃金上昇率+1.7%)

収益がマイナス時には張り切って「年金叩き」を行う傾向があるマスコミ各社、収益が微減だった今期の対応はどうでしょうか。調べてみました。

Googleニュースで各メディアのネット報道内容をチェックします。チェック項目は過去の調査と同様、(1)収益額、(2)収益率、(3)運用開始からの累計実績、とします。

公的年金の運用実績(2023年度第2四半期)に対するマスコミ各社のネット報道状況

 
  (1)収益額 (2)収益率 (3)累計実績 備考
日本経済新聞 
ロイター ×  
ブルームバーグ ×  
朝日新聞 
毎日新聞 報道なし
読売新聞
産経新聞 - - 報道なし
共同通信 ○ ○
時事通信  ×
NHK  
日本テレビ - - - 報道なし
TBS - - - 報道なし
フジテレビ 報道なし
テレビ朝日 ○ ○
テレビ東京 報道なし
(Google ニュースより梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー作成。2023/11/06 19:00時点)

まず、GPIFの運用実績がマイナスだったにもかかわらず、前回の年度実績の時よりも全体的に報道レベルが向上しています。

ただメディア別に見ると、テレビディアは報道レベルが低いです。

今回は6社中4社で報道自体がありませんでした。NHKは引き続き(1)収益額、(2)収益率、(3)累計実績がフル項目でわかりやすい報道内容でした。テレビ朝日も(1)収益額、(2)収益率、(3)累計実績がフル項目を掲載するようになりました。ほかは報道自体がなく論外です。

次に、新聞メディアの報道レベルは玉石混交です。

朝日新聞と読売新聞が今回(1)収益額、(2)収益率、(3)累計実績がフル項目を掲載する一方、毎日新聞と産経新聞は報道自体がなく論外でした。

次に、通信社は報道レベルが向上しました。

前回、(1)収益額のみの不適切報道だった共同通信は(1)収益額、(2)収益率、(3)累計実績のフル項目を掲載しました。たとえ短い文章でも情報の要素をしっかりと押さえて報道すれば、読者は運用状況を理解できます。時事通信、ロイター、ブルームバーグは引き続き、(1)収益額、(2)収益率掲載で合格点。

共同通信のフル項目化は1社だけの改善でありません。通信社は地方新聞などに記事を配信しているので、お粗末報道をしてしまうとそれが拡大再生産されてしまう一方で、高品質な報道をすれば正しい情報を効率よく国民に届けることが出来ます。今後も情報の要素を押さえた報道と配信をしてほしいと思います。

全体を通じて、(1)収益額だけを表記して、収益率や運用総額を伏せたままマイナス(あるいはプラス)金額の大きさだけで騒ぎ立てる不適切メディアがひとつもなくなったことは、一定の進歩といえると思います。ぜひ、運用実績の好不調にかかわらず、このスタンスでいってほしいと思います。

GPIFの運用総額は219兆円と超巨額です。(2)収益率、もしくはせめて運用総額を記載しないと、その(1)収益額が、驚くべき大ごとレベルのことなのかふつうのことなのか、読者は評価することができません。べつに長文でなくてもかまわないので、読者が状況を理解できる情報の要素を押さえた報道をしてほしいと思います。

公的年金の年金積立金の運用実績というひとつの切り口ではありますが、日頃から国民に正しい情報を届けようとしているのか、ネガティブ報道だけを大々的にやろうとしているのか、メディアの報道スタンスを垣間見ることができます。公的年金に大きな損失が出た時だけ鬼の首を取ったように騒ぎ立て、利益が出ている時は報道しないメディアなど論外ですし、報道する際は、読者が状況を理解して正しく評価できる情報要素を押さえた報道をしてほしいと思います。

公的年金制度に関しては、人口増加を前提とした制度設計であることや、未納問題、過去には消えた年金問題、マクロ経済スライドの未実施等、多くの課題を抱えていることは事実です。

しかし一方で、年金積立金の運用については真面目に行われており、情報公開も進んでいるというのが、運用をウォッチしている私の認識です。これらの公開情報は、世界最大級の機関投資家の情報として、個人投資家の資産運用にも大いに参考になるものです。

年金は国民の最大級の関心事のひとつです。マスコミ各社は煽る方向ばかりに張り切るのではなく、良いことも悪いことも含め、きちんと「事実」を伝えてほしいと思います。


P.S
本文にも書いたとおり、ネットで公開されている範囲での情報収集なので、「ニュースサイトには掲載していないが、新聞本紙では掲載している」「○時○分のTVニュースで触れた」等の事情はあるかもしれません。だからといってメディア名を冠したネットニュースには非掲載でよいという理由にはなりません。


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Posted by水瀬ケンイチ