流行りモノみたいにESGを消費したファンドの功罪
水瀬ケンイチ

ブルームバーグが「ESGファンド」のブームが去り、繰上償還が相次いでいると報道しています。
詳しくは上記記事をご覧いただきたいのですが、趣旨をむりやりまとめると、今年消滅した12本のESGファンドは運用開始5年未満で過半を占めており、今後もブームの後始末はなお続きそうとのこと。
まず、ESGとは何のことか。
ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス(企業統治))を考慮した投資活動や経営・事業活動を指す。
(内閣府ホームページより)
上場企業であれば環境、社会、企業統治を考慮した事業活動は当たり前の話でしかないと私は考えており、以前からESGファンドの存在意義ってなんだろう?と疑問を持っていました。
それでも、つい2年前の2021年まで、金融業界とメディアはESGファンドを持ち上げ、「ESGファンドが個人マネーを吸収している」と意気揚々でした。当時の新聞記事曰く、「ESG(環境・社会・企業統治)関連の投資信託の運用残高は19年末から6倍に膨らみ、環境意識が高まる個人投資家マネーの受け皿になっている」とのことでした(該当記事)。
しかし、当時の金融機関の狙いはESGの推進ではなく、ESGファンドの信託報酬の平均が年1.44%と通常のアクティブファンド(年1.23%)に比べて高かったことだったようです。収益減に苦しむ運用会社にとって比較的高い信託報酬を設定できるESGファンドは渡りに船だっただけなのでしょう。
一時的に販売が伸びたものの、その後は運用コストが高いからか、リターンが低いからか、あるいはその両方だからか、残高は伸び悩み、挙句の果てには続々と繰上償還です。
もっと前(10年くらい前)にはSRI(社会的責任投資)ファンドが流行しましたが、SRIファンドの末路は皆さまご存知のとおりです。そして現在、ESGファンドが冒頭記事のようなありさまです。今後、似たようなコンセプトのSDGsファンドも早晩同じような運命をたどるであろうことが目に見えています。このような「焼畑農業」はエコじゃない。
いうまでもなく、企業の環境・社会貢献等の取り組みは重要です。本業の仕事で携わっていたこともあります。そして、企業の環境・社会貢献等を応援するのなら、該当企業の株式への投資という間接的な形ではなく、該当企業の商品・サービスを利用者として(多少高くても)選んで直接購入することの方が本筋だと私は考えます。
金融業界は企業のESG、SDGsのような取り組みを、流行モノのような高コストファンドの販売で消費しないでほしい。取り組んでいる当事者たちをしらけさせないでほしい。そう思います。
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