「ETF投資入門」(太田創著)は真面目で硬派なETFテキストですが

水瀬ケンイチ

「ETF投資入門」(太田創著)を読みました。



ETFという名前はよく聞くようになってきましたが、じゃあ実際に「ETFってどういうもの?」と聞かれると言葉に詰まってしまうかたも多いのではないでしょうか。

本書では、ETFの仕組み、歴史とその背景、運用各社の紹介といった教科書的な知識が手厚く網羅されており、アタマの情報整理になりました。
また、マクロ経済動向や主要な経済指標の解説など、ETFだけでなく幅広い経済知識が網羅されているところも渋いです。

ただし、実践ノウハウ的な内容が浅いように思います。
「ETFによる国際分散投資ポートフォリオ」の章では3つのポートフォリオ案が提示されていますが、思わずおいっ!と突っ込みたくなる程度のものです。

(1)ハイリスク・ハイリターン・ポートフォリオ
 ILF、EZA、IEERを3分の1ずつ
(2)オルタナティブ・ポートフォリオ
 IYR、GSGを2分の1ずつ
(3)分配重視型ポートフォリオ
 AGGのみ

また、「必殺!ヒラメ戦術+ドルコスト平均法」の章で書いてあることは、要するにドルコスト平均法+たまにやる臨時投資のことであり、多くのかたが既に自然にやっていることで、必殺というほどのことはありません。
最終章の「ETF投資の心理学」にメンタル面での処し方についての記載があります。
類書で手薄になりがちなメンタル面の記載があるだけいいのですが、「性格別投資法」(20問のテストによって、あなたはバフェットタイプ、あなたはソロスタイプ…など占いレベル)など内容が少々浅く、個人的に少し物足りなさが残りました。

初版が今年2008年3月の本とそんなに古くはないのですが、今まさに激動のETF市場においては、既に掲載ETFラインナップが古くなっており、実際に投資する際には、ネット等をつかっての情報のアップデートが必要かと思います。

全般的には、前半部分が、ETFに特化した真面目で硬派なテキスト(個人的には好きです)、後半部分が……(個人的にはノーコメント)という感じでした。
本書はETF本の先駆け的存在なのだと思いますが、北村慶氏やカン・チュンド氏から後発のETF本が出ているので、それらも読んでみたいと思っています。


(ご参考)
未読ですが、続編の「海外ETF投資入門」が今月出ているようです。ご参考まで。


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Posted by水瀬ケンイチ