インデックス投資ナイト実況レポート(その2)

水瀬ケンイチ

インデックス投資ナイト実況レポート(その1)の続きです。

繰り返しになりますが、単なる座談会の紹介だけでなく、随所に水瀬の個人的見解も織り交ぜさせていただきます。
内容についてはできる限り正確を期しておりますが、水瀬の主観による省略やまとめが含まれますことをご了承ください。
なお、掲載内容に問題がありました場合、お手数をおかけして恐縮ですがご連絡ください。できる限り速やかに対応させていただきます。


イーノ・ジュンイチ氏
「山崎さんは以前、インデックス運用そのものについて多少懐疑的な意見を述べていたのを覚えている。例えば、日経225やTOPIXの銘柄入替の際に投資家が見えないコストを負担しているのであまり良くないと書かれていたが、今はどう見ているのか?」

(水瀬コメント:具体的には、2000年等の日経225銘柄入替の際、市場参加者(主に証券会社の自己取引部門)が、入替の銘柄と株数とタイミングを知りその動きを利用したため指数が下ブレした(個人投資家はその分損をした)出来事と、2005年のTOPIXの浮動株指数化の際、大幅な銘柄入替が行なわれ、日経225と同様個人投資家が損を被る恐れがあるとの懸念から、山崎氏はインデックスファンドやETFはしばらく見送るほうがいいと当時の著書で表明していました(出典:「お金をふやす本当の常識―シンプルで正しい30のルール」(山崎元著)など)。
さすがイーノさん。前から聞いてみたかった、痒いところに手が届くナイス質問!)

山崎元氏
「かなりマーケットの裁定が働くようになってきているので、インデックス入替による見えざるコストの影響は小さくなってきた。そういう意味では、かつてよりも安心な状況になってきていると思う」

イーノ・ジュンイチ氏
「山崎さん的にはそろそろおすすめしてもいいという感じになってきている?」

山崎元氏
「最近書いた本でも、国内株と海外株を、インデックスファンド・ETFでぽんぽんと買いましょうということを書いているくらいですから。日本株はTOPIXでいいと思う。ただ、ポートフォリオとしてのTOPIXが、ファンドマネージャーとして持ちたいポートフォリオかというとそうでもない。まして日経225は値嵩株・ハイテク株のウェイトが高く、なんとなくその時に元気そうな会社を後追いしたような、ヘタクソな金持ちが作ったポートフォリオみたいな感じ。本当にいろいろなインデックスが出てくるといい」

(水瀬コメント:「超簡単 お金の運用術」(山崎元著)のことを指していると思われます。未読のため正確には分かりません。ごめんなさい)

えんどうやすゆき氏
「スモールキャップとか、バリューインデックスとか?」

山崎元氏
「例えばトヨタが2倍3倍になるかというとなかなか想像しにくい。自分はそういうものに人生を賭けたいとは思わない。例えばそういう“いろいろな思想”を実現したインデックスが多様にあってもいいなあという気はする。ただ、それがビジネスのラインに乗るかというと難しいとことはあると思う」

竹川美奈子氏
「インデックス投資家の要望を全部集めて商品にすると、会社的にはまったく儲からないということですよね」

山崎元氏
「そういうことになり得る。だから、どのくらい運用会社に飯を食ってもらうために払ったらいいのかということも、ある程度は考えなくてはいけないかもしれない」

(水瀬コメント:ここで客席から質問が。こういうインタラクティブな座談会っていいですよね)

お客さん
「先ほど山崎さんが先月出版した本の話が出たが、そのなかで外国債券は買わないという話が出ていた。例えば、他のアセットクラスと同じくらいコストが低い外国債券ETF・インデックスファンドが出たら、ポートフォリオに入れてもいいということはあるか?」

山崎元氏
「私がやっている国家公務員共済組合連合会という運用では、外国債券は入っていない。どうしてかというと、ポートフォリオ全体で外国為替のリスクをあまり多く取りたくないから。外国株を買うということは、日本にない外国のビジネスに対して分散投資できるというメリットがある。しかし、外国株に為替リスクを割り当てるとすると、さらに外国債券や外貨預金を持つということは、為替リスクが過剰になるとともに、たいていコストがかかる。ただ、為替のヘッジがもう少し丁寧にできるのであれば、外国債券を含めて分散投資してもいい。外国債券を含めた時のほうが、ない時よりもポートフォリオが改善するということは算数的にも明らか。ただ、個人のお金の範囲のなかで、為替リスクをヘッジしない場合、為替リスクは外国株に割り当てたい、そんな考えだ」

えんどうやすゆき氏
「次に、“もっともおすすめな投資法”について聞きたい。先ほどの話で少しこれに入ったかもしれないが、ひとりずつ。じゃあイーノさん」

イーノ・ジュンイチ氏
「ちょっとずついろんなインデックスファンドに分散投資すること。理由は、僕自身“この投資に失敗するとオレの老後は失敗する”というのは好きじゃない。基本的には投資で儲けたいというよりは、自分の本業をがんばって給料を上げて儲けたいと考えている。できるだけ構わないで済む投資で、理屈に合っているとすると、ちょっとずついろんなインデックスファンドに分散投資というのが自分でもやっているし、人にもおすすめしたい」

カン・チュンド氏
「私が言いたいことをイーノさんが言ってしまったので同じ。最もおすすめの投資は皆さんのお仕事。これがいちばん大事。投資をサブの仕事、1年間で10時間くらい、10年でも100時間程度でいい。それを途中で投げ出さないで続けることができれば、時間の割にはそこそこな経済的利益が期待できるのではないか。皆さんの人生時間のなかでは、本当にたいしたことがない作業と思っていただければと思う」

内藤忍氏
「たぶんここにいるかたは皆同じことを言うと思う。あとは、インデックスファンドを積み立てるというのはほぼ共通だが、どこに投資するファンドをどういう比率で買っていくのかというところは個別に違ってくる。株式比率、外貨比率、REITは入れるか、コモディティは入れるか等という細かいところは微妙にずれているのではないか。基本的には、低コストのインデックスファンドで時間の分散、資産の分散をするのがいい」

イーノ・ジュンイチ氏
「内藤さんは以前、バランスファンドをおすすめされていらっしゃいましたよね」

(水瀬コメント:このイーノさんの何気ないひとことが、あのような熱い大論戦になろうとは、この時いったい誰が予想していたであろうか…)

内藤忍氏
「バランスファンドというのは、いろいろなものが入っているものだが、スーツで言うと吊るしのスーツ、フランス料理で言うとコース料理のようなもので、自分で組み合わせが分からない人にはとりあえずお任せするというもの。おそらく、今日お集まりの皆さんは自分でポートフォリオを作ることができると思うのが、最初分からないというかたはまずそれでやってみて、いずれ自分が出来るようになったらそこから卒業するという位置づけになると思う」

山崎元氏
「すこしツッコミを入れていいですか?」

(水瀬コメント:キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!)

「自分で分からない人というのは、そもそもまだ投資をすべきではないということでしょ。アセットアロケーションがロクに分からないのに金だけは任せる、そういう人から手数料だけは取る(会場笑い)。バランスファンドというものがあるよ、これだと考えなくていいよと言うが、考えなくてもリスクは持つわけだ。しかも、バランスファンドの部品を個々に買ってくるほうが、コストはだいたい安いわけだから」

(水瀬コメント:これは山崎元氏が常々言っている、平成の主張です)

内藤忍氏
「それはいろいろな考えがあると思うが…」

山崎元氏
「何か考えようがあるわけですか?」

内藤忍氏
「早くやったほうがいいということがあると思う。10年、20年経って分かりましたというよりは、走りながら考えるということもある。完全に理解するということは永遠にないと思う。アセットアロケーションについて、僕も若輩者だから完全には分かっていない部分があるし、山崎さんも考え方が変わってくるということもあると思う。そういう意味からすると、まず始めてみるということのほうが、車の運転と同じと僕はよく言うが、いいと思う」

山崎元氏
「だとすると、インデックスファンドを小額で買えば、それほど大きなリスクにはならないわけで、とりあえずそこにある金をバランスファンドに引っ張ってきてそれを手数料にしようというのは、やっぱりタチが悪いように見える」(会場笑い)

内藤忍氏
「バランスファンドも必ずしもそんなに手数料が高いとは言えないと思うんですが。最近のものに関して言えば」

(水瀬コメント:たしかに最近は、SBI資産設計オープン(信託報酬0.7140%)、セゾンバンガードグローバルバランスファンド(同0.75~0.79%)、ジョインベストグローバルバランスファンド(同0.525~0.635%)等、比較的低コストなバランスファンドが出てきています。アセットアロケーションは違いますが、いずれもインデックスファンドを組み合わせていて、かつ低コストに抑えられています)

竹川美奈子氏
「ちょっとだけ参戦すると、私はバランスファンドもひとつの選択肢として入れてもいいかと思う。2年位前までは、バランスファンドは山崎さんの仰るようないわゆる“ボッタクリ系”のすごく手数料が高いものしかなかったが、信託報酬が1%をきるものも出てきた。分かっていないというよりは、自分の生活においてどれだけ資産運用に手間と時間をかけられるかというところと、性格的なところもあると思う。ある程度インデックスファンド・ETFを組み合わせて運用すると、どうしてもリバランスしたり、多少手間をかけていかなければいけないので、若干低コストなバランスファンドで、リバランスとか資産配分を含めて任せるというのもあってもいいと思うが、ダメですかね?」

山崎元氏
「個別のものを大雑把に買っておいても、そんなに問題はない。リバランスがチマチマ必要だと思ってシコシコ手数料を落としてくれるとネット証券としてはありがたいのだが、例えば、国内:海外を4:6にするという比率を本で書いたが、それが5:5になってもリスクの大きさはそう大きくは変わらない。そこをバランスファンドにする意味はあるのかと思う。よく分からなければ、額を小さくすればいいのだから、あくまでも中身の分かるものを投資したほうがいいだろう。結局、中身を見ながら投資していかないと、バランスファンドなんかを持っていたら、10年経っても20年経っても何も考えないままですよね」

カン・チュンド氏
「ちょっといいですか。不肖、個人でFP事務所をやっていてコンサルティングを一人一人とやっていると、投資の経験がないと仰っているがバランスファンドを5万円くらい買っているというかたって結構多いんですよ。日本人において、今日来ている120名は10000人のなかの120名だと思う。あとの9900名は投資をまだしていない。その方々は非常に大きなハードルを感じていて、そういうかたに投資に入っていただくためのひとつの最初の道具ととしては、私バランスファンドは日本では特に有用だと思う。でも、山崎さん仰るように、それで終わらないで、最終的には自分でポートフォリオを作っていけるようになればいいと思う」

山崎元氏
「商品企画的にはなんとなくバランスファンドは出しやすいというか、売る立場で考えると、例えば株が3割下がった時に3割まともに下がられたのでは厳しいと。1割で済みましたと言えるようなもののほうが売り子は売りやすいので、買うほうも買いやすいということはある。そういう意味では、何もしないよりはちょっとしたほうが、ということはあるかもしれない。それは意見の対立点というよりは、物事がそういうことになっているということだ」

えんどうやすゆき氏
「あの~…」

(さえぎるように)山崎元氏
「ただ、ああいうバランスファンドばかり企画する運用会社とか金融機関の商品企画の連中は、結局、セールスマンがまともなアドバイスが出来ないと思っているからバランスファンドでも売らせておけばいいんだということになっている。これは売り子もバカにしているし、客もバカにしているし、まあ無難なのはバランスファンドだみたいなことで、そんな形で降って来るものに金を出すのは感じ悪いでしょう、はっきり言って」

えんどうやすゆき氏
「あの~、“初めての人が何をすればいいのか”ということを次にお聞きしようと思っていたが、既に、バランスファンドをやってみたらいいんじゃないかという派と、バランスファンドはやめろという派が…」

(さえぎるように)内藤忍氏
「例えば、10万円投資しましょうという時に、そういう風に考えられる人っていうのは、投資家のなかではリテラシーが上のほうにいる人だ。本当にわからない人ってTOPIXも日経225も何もインデックスすら分からないという人もいるわけで、そういうかたにまずやっていただくことというのは、やらなくて後で後悔するのと、ベストじゃないかもしれないけど割と近いものをとりあえずやっていただいて、そこから先は次のステップという、どこから始めていただくかという話になるんじゃないか。もちろん、山崎さんの仰るような売り手の論理というのはあると思うが、じゃあバランスファンドが世の中からなくなってしまったらどうなるのか。それによって、後から後悔する人や、投資ができなくなってしまう人もいるのではないか。結局、使い方、売り方、啓蒙の仕方、その辺にかかわってくるのではないか。
安易にぼんぼん売るのではなく、いずれ自分でやるためのファーストステップとして使ってみてはいかがでしょうかという使い方をすればいい。ネット証券の場合は、押し付けしているわけではないし」

竹川美奈子氏
「私は、インデックス投資家の人たちも最初からインデックス投資に目覚めたというよりも、自分で株式投資をしてみたりとかして失敗を重ねながら、やっぱりインデックスが一番いいんじゃないのと最終的に戻ってくる人も多いと思う。最初から自分でリスク・リターンを計算してポートフォリオを組めるかたはそれでいいと思うが、やってみてもやっぱりダメとか、そこまで週末に時間を取れないとか、いろいろあると思う。やはり時間、手間、性格ということを含めて、バランスファンドは初心者だけではなく、やってみて最終的に居心地がいいということであればいい。コストが安くて、資産配分のアプローチが明確になっているものであれば、バランスファンドに戻ってくるというのもひとつかなと…」

(間髪いれずに)山崎元氏
「ちゃんと明確になっているバランスファンドなんてどこにあるんだ!」

(水瀬コメント:議論はかなりヒートアップ!ここで客席からひょっこり質問が。議論を一時休戦におさめたのは、このかたの質問でした。Good job!(^^)b)

お客さん
「ちょっと前になって申し訳ないが、今後の投資については毎月各アセットクラスのインデックスファンドを買うということだったと思うが、なかには、今2000~3000万持っている人もいる。ある一定の投資金額を持っている人はどのようにしたらいいかを聞きたい。山崎さんに聞きたい」

山崎元氏
「そうですね。積み立ては貯蓄の習慣としては優れいていると思うが、既に投資できるお金を持っているのであれば、投資タイミングを分けることは基本的には意味がない。機会ロスが発生するしコストが大きい。
どれだけリスクが取れると考えた場合、仮に国内・海外を半々くらいならおそらく最悪3~4割のロスを覚悟しなくてはいけない。その3~4割のロスが決定的ではないという場合、国内外の株式(のインデックス商品)を買ってしまっていいと思う。リスクにさらしたくないという場合は、第一候補はMRF、投資のことを考えたくない時は個人向け国債をすすめている。
現在が投資のタイミングなのかということは、何とも言えないところだが、おそらく去年の進行を見ていると、日本の90年代をVTRを早回しにしている感じだ。9月15日のリーマン・ショックが97年11月の山一證券が潰れたあたりだと時間合わせをすると、だいたい今は98年から99年くらい。そういう意味では、投資のタイミングとしては非常にいいタイミングになる可能性があって、ただ98年は経済成長的にはいちばん厳しかった時でマイナス1.5%という時だったので、景気は悪い、風景は悪いけれども、投資をするにはいいタイミングだというようなあたりではないのかと。
それに賛成の意見を持つのであれば、国内外の株式を半々くらいにして取れるだけのリスクを取ったらいいのではないかと思う」

バランスファンドに対しては皆さん一家言あるようで、お互い一歩も引かぬ熱い論戦となりました。
いらないという山崎氏に対して、いるという内藤氏・竹川氏・カン氏。
個人的には、山崎氏には、昨今のバランスファンドのコスト低下をもうすこし加味して考えてもらい、それでも考えは変わらないのかを明確にしてほしかったというという思いが残りました。
他のかたには、入門用のバランスファンドを卒業することが出来た場合、ポートフォリオにバランスファンドが残っているとその後の資産比率の管理が却って面倒になり且つそれが一生付きまとう点についてどう考えるか聞いてみたかったという思いが残りました。
でも、質問できそうにない気迫だったんですよね。
一時はどうなることかと思った論戦も、お客さんの水入りで通常モードに戻りました。
あれ、そういえば、この論戦の口火を切ったイーノ氏はどっち派だったっけ???(笑)

続いて、山崎氏の相場観が披露されました。
さすがの山崎氏でも将来のことが正確に分かるわけではないはずなので、信じるか信じないかは皆さん次第だと思います。
僕は、相場予測は不可能と割り切っているので、こつこつドルコスト平均法を続けるだけですが。

(水瀬の血圧急上昇の次回に続く…)

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Posted by水瀬ケンイチ