インデックス投資ナイト実況レポート(その3)
水瀬ケンイチ
インデックス投資ナイト実況レポート(その1)(その2)の続きです。今回が最後です。
繰り返しになりますが、単なる座談会の紹介だけでなく、随所に水瀬の個人的見解も織り交ぜさせていただきます。
内容についてはできる限り正確を期しておりますが、水瀬の主観による省略やまとめが含まれますことをご了承ください。
なお、掲載内容に問題がありました場合、お手数をおかけして恐縮ですがご連絡ください。できる限り速やかに対応させていただきます。
えんどうやすゆき氏
「では最後に、“これだけはやってはいけない危険な投資法や考え方”について教えてください」
繰り返しになりますが、単なる座談会の紹介だけでなく、随所に水瀬の個人的見解も織り交ぜさせていただきます。
内容についてはできる限り正確を期しておりますが、水瀬の主観による省略やまとめが含まれますことをご了承ください。
なお、掲載内容に問題がありました場合、お手数をおかけして恐縮ですがご連絡ください。できる限り速やかに対応させていただきます。
えんどうやすゆき氏
「では最後に、“これだけはやってはいけない危険な投資法や考え方”について教えてください」
山崎元氏
「人に投資のアドバイスを求めて、アドバイスをしてくれた人から運用商品を買ってはいけない。これが大事なことだと思う。
例えば、FPなんかでも証券仲介業とかやっているとだいたい手数料の半分くらいが入るようになっているが、意見を聞くのはいいことだけれども、その人がその時間を何のために使っているのか考えた時に、やはりアドバイスが歪む可能性がおおいにある。
また例えば、退職金が振り込まれた銀行に決して相談してはいけない。銀行は、銀行員の顔を見ずに使うのがコツ。なるべくネットバンキングでお金を動かして、せいぜいATMを利用するくらいにしておく。出来るだけ銀行には行かないほうが、余計なファンドをセールスされることもないし、今のシーズンだと風邪もうつされない」(会場笑い)
竹川美奈子氏
「基本的には、どの商品がいいですかという“商品選び”から入るのはやめたほうがいい。
投資期間、投資目的、目標リターンなどの大きいところから入り、ざっくりとでも資産配分を決めたうえで、最終的に商品選びというように落としていかないといけない。大部分の人は商品選びから入ってしまうので、インド株ファンド3つと中国株ファンド3つとかでそれでリスク分散しています、みたいなことになってしまう。
商品選びからではなく全体像から入っていくということが大事だと思う」
内藤忍氏
「誰のアドバイスを聞くかは非常に難しい。結局、利害関係がなくても考え方が間違っている人もいれば、銀行員も利害関係は持っていても正しいことを言っている場合があるのが悩ましい。
ひとつ言えることは、相場が変わると自分のポリシーが急に変わってしまう人がいるが、そうなってしまわないように、自分は何を心の拠り所にしてこの先10年間やっていけるのかということをよく考えて、そこに立った投資を、相場環境が変わっても続けていくことが大事。
インデックス投資が結果的に正しいかどうかは結果論でしか分からないが、僕は基本的には、これから投資をしていって着々と続けていけばいいと思う。相場の上げ下げで投資の考え方がぶれないような投資の基本をしっかり持ってそれを続けていくことで、失敗しても後悔しない、納得感のある投資になる」
カン・チュンド氏
「人があっちのほうがいいですよ、たくさん魚が釣れますよと言っていても、後追いをしていかない。自分ひとりでも孤独でも、それを自分のなかで受け入れる大きな信念のようなものが必要。
例えば、カンさんたくさん釣れてるよ!何で来ないの!と言われても、自分が行った時にはもうリターンがなかったりする。
今どういう状況かというと、魚全然見えてない。船もまったく出ていない。誰がこんな時に魚釣りするんですか?という状況。でも、今船をこぎ出して魚釣りをし始める人にはもしかしたら大きなリターンが得られるかもしれない。
つまり、ひとりでやってもそれを怖がらないという心構えが必要」
イーノ・ジュンイチ氏
「僕は専門家じゃないので、自分の経験を話すと、始めて投資をしたのは10年前、貯金や退職金で200万円ほどあった。当時、金利が低かったので投資の勉強をして投資信託を選んだ。すごそうだと思って舞い上がり、200万円投資信託に全部つぎ込んだ。グローバルファンドとバランスファンドの2本、前者はITバブルを乗り越えられず強制償還され、後者は安定的な運用のはずだったのに何故かITバブルに乗り中身がIT銘柄ばかりになっていてその後値が下がってしまった。
僕が経験から得たのは、やはり勉強するまでは、ちょっとずつやったほうがいいということ。
でも、やってみなければ分からないということもあるので、大火傷しない程度にすこしリスクを取ってみて、後にいい投資が出来るようになった時のためにお金を残しておいたほうがいいのではないかと思う」
(水瀬コメント:山崎氏の「買い方」、竹川氏の「選び方」、内藤氏の「心の拠り所」、カン氏の「大きな信念」、イーノ氏の「残し方」、それぞれ非常に含蓄のある値千金の「べからず集」だったのではないでしょうか。聞きながら、これは書き残しておかねばと思いました)
えんどうやすゆき氏
「質疑応答の時間を設けたい。まず、私のブログで1件質問が来ていた。“海外ETFを買うのに、総合的に個人投資家にとってメリットのあるネット証券はどこですか?税金、確定申告、初心者に優しい画面かどうか等その他の視点で”」
イーノ・ジュンイチ氏
「これは最初に僕が発言していいですか?ここにいる僕以外の人間は利害関係者が多いです。会場にETFに詳しそうな知った顔がいるので、ちょっとマイクを向けていいですか?名前は言いませんが」
(水瀬コメント:抜き打ちでybさんにマイクを向けるイーノ氏)
「だめ?」(ブンブン首を振るybさん)
(水瀬コメント:抜き打ちでモンチさんにマイクを向けるイーノ氏)
「だめ?」(ブンブン首を振るモンチさん)
(水瀬コメント:抜き打ちで僕にマイクを向けるイーノ氏)
「だめ?」(ひ~~~無茶振りだ~~~!!)
水瀬ケンイチ
「い、いいですよ。水瀬ケンイチと申します。突然振られて何も考えてなかったんですけど(イーノさ~~~ん;;)。自分としては、今は海外ETFを含めたインデックス商品の過渡期だと思っているので、どこかひとつの証券会社に操を立てて一生変えないという時期ではないと思っている。なので、自分は楽天証券とマネックス証券とSBI証券の3つをアクティブに保っていて、良さそうな商品が出てきたらそれをツマミ食いしているという形でやっている。つまり、ここぞと決めないほうがいい時期だと思っている」
山崎元氏
「質問していいですか?(会場大爆笑)楽天証券はその3つで比較するとどの辺が問題か?」
水瀬ケンイチ
「悪いところですか?いいところじゃなくて」
山崎元氏
「悪いところを聞いたほうが役に立つでしょう、それは」
水瀬ケンイチ
「わかりました。楽天証券の場合は、個人的に思うことは、WEB画面の作りが非常に分かりにくくて、自分が買っているETFを見たいのにどこをクリックしたらいいのか分かりにくいというところが困る」
山崎元氏
「トップページからということですね?」
水瀬ケンイチ
「いいえ、ログインした後のページが分かりづらい」
(水瀬コメント:山崎流に、「まるで付き合うまでは一生懸命だが釣った魚には餌をやらない男性のようだ」と言おうと思いましたが、それはやめておきました)
山崎元氏
「けっこう大変な問題じゃないか。ありがとうございます」
内藤忍氏
「ついでに、マネックス証券の問題点も!(会場拍手)SBIの問題もどうだろうか」
水瀬ケンイチ
「じゃあ順番に行くと、マネックス証券の困るところは、最近まで投資信託・海外ETFの品揃えが他と比べて揃っていなかった。最近品揃えも追いついたし、手数料も最も安いので今のところいいかなと思っている。
最後に、SBI証券は海外ETFについて、コストはマネックスに負けていて、品揃えは楽天に負けているという状態で今いいところなしだが、ネット証券最大手なので今後の巻き返しに期待」
(水瀬コメント:イーノさんもお人が悪い。ひとこと事前に言っていただければ、もっと気の利いたことがいえたのに…寿命が3年くらい縮みました)
えんどうやすゆき氏
「カンさんと竹川さんは?」
カン・チュンド氏
「私はそんなに大きな差はないと思っている。一番大事なのは10年後も皆さんの窓口としてちゃんと存続しているのかということ。会社の構造的に親会社が中長期的なビジネスの方向性の変更で、証券をクローズしないとも言えない。だから、水瀬さんが言ったように複数の口座に分散しておくのはリスクヘッジになると思う」
山崎元氏
「ビジネスの構造から考えると、個人的な意見だが、例えば10年後はSBI以外はどこが消えていてもおかしくない(会場笑い)。結局、勝った一番手が非常に有利、二番手はギリギリで、三番手は生きにくい、基本的にはそういうビジネス構造。ただ、どうにかなった場合も、おそらく口座はどこかに引き継がれていくものと思われる。連続性を考えると、ネット証券もなかなか厳しい。
株式売買手数料の価格の叩き合いをやった後、その次に何で儲けていくのかというところがあまりハッキリ見えてきていない。資産残高を積み上げて、資産運用のサービス会社としてなんとかやっていけないかというのがひとつのアプローチであるが、ビジネスとしてうまくいくかどうかはよく分からなくてなかなかスリリングだと思う」
竹川美奈子氏
「基本的には、カンさんと水瀬さんと一緒で、SBI・楽天・マネックスの3社に関しては、現状にどこが一番いいかまだ決めかねている状態。これから、手数料体系、商品構成、特定口座に入れられるようになるかどうか等、サービスを見極めていく時期。情報公開もちゃんとしていただきたい。
ETFの品揃えに関しては、国内ETFより海外ETFが有利な状況でこの3社でどこが一番有利かという話になるが、例えば、東証に、先進国に幅広く上投資するような海外ETFを並行上場したらどうなるのかと言ったら、この3社でどこがいいかというより、国内株の取引をするにはどこがいいかという発想で、証券会社の世界地図が塗り変わる可能性がある。ただ、現状では厳しいと思うが」
カン・チュンド氏
「ちょっといいですか。今竹川さんが仰ったことは非常に重要で、海外ETFは現在の選択肢としては重要だが、これはあくまで過渡的な流通形態だと思っている。というのは、本来的には日本国内の取引所で、円建てで、多種多様なETFが品揃えされるというのが目指すべき完成形。そういう意味で言うと、海外ETFというのも過渡的な現象であると長い目でみると言える」
(水瀬コメント:カン氏は国内市場への海外ETF並行上場が目指すべき完成形としています。僕も一応そう考えているのですが、懸念点もあります。それは日本というローカルマーケットにおいて多種多様なETFが上場された場合、流動性不足による価格形成の歪みが問題にならないかということです。買いたい時に割高なETFを買うのは嫌ですし、売りたい時に割安に売るのも嫌です。
香港市場でもやっているのだから大丈夫と考えるか、やはり本場の市場(米国や欧州)で売買したほうがよいと考えるか、人によっては意見が分かれるところだと思います)
えんどうやすゆき氏
「他に特に聞いておきたいことがあるかた?」
お客さん
「伝統的アセットクラス以外の金融商品を考えているが、グローバルREITについてお聞きしたい。山崎さんや内藤さんの著書でREITには不透明な部分があったので、投資を控えていたが、グローバルREITについても同じような問題は抱えているのか?」
内藤忍氏
「問題というのは具体的にはどういうことか」
お客さん
「利益相反など」
内藤忍氏
「もちろん、実際にあるかどうかは別として、そういう可能性がある仕組になっているとは言える。問題がなかったと仮定しても、そもそも不動産に投資をする意味があるのか、その分株にした方が効率性から考えて得策なのではないかという話はある。正直、よく分からない部分があるので、グローバルREITはインデックスファンドに自分でも投資をしている。信託報酬が安ければMAX10%くらいは入れてもいいんじゃないかと思っている」
山崎元氏
「アセットクラスとしてのREITはあってもいいと思っている。それは、不動産の場合は資本としてお金を出して、そこに何らかの生産活動があって、そのメリットが取れるというのは株式と同じような意味で、リスクに対するリターンが形成されるはずの資産だと言える。
ただ、当初REITがかなり怪しかいものであったとも言える。不動産会社から見ていらない物件をREITに売るという不透明さはあった。それでも商品が出た時に一応成功させたがってたから、最初はいいものを詰め込んだが、今は不動産価格が崩れてREITもひどいことになっている。
一般論として、どういう性格のリスクとリターンがあるのかよく分からない投資家が多いだろうから、無理に持つ必要はないが、アセットクラスとして考えると、持つ事があってもいい。それから、現在の不動産市況が面白いのかということがあるが、そろそろ面白くなってきたと言えると思う。不動産をバルクで買ってきて後から処分して儲けられたのが99年のタイミング。そういう意味では、収益不動産の底がそろそろ入りつつある。ただ、まだ不動産会社のバランスシートを見ると、売ってしまうと損が出て債務超過になってしまうので売れない状況。売りたい物件を売れない最終段階ということ。REITで変なレバレッジがかかっていないものでディスカウントになっているものを探すことが出来たら、日本のREITについて投資チャンスはあると思う。
たまに八百長があるかもしれないが、競馬は楽しいというかたは、買ってもいいんじゃないか」(会場笑い)
(水瀬コメント:山崎氏は質問の主旨(グローバルREIT)から離れ、日本REITについて詳細に答えており、ちょっと質問者は困惑したかもしれません。流れで話がいろいろ転んでいくのは台本のない生ライブのいいところでもあり、ちょっと困ってしまうところでもあります。個人的には、面白かったし参考になっちゃいましたが(^^ゞ)
えんどうやすゆき氏
「他には?」
お客さん
「投資1年の初心者だが、以前友人と話していて、彼は自営業で自分で会社を作った人間だが、議論で負けてしまったことがあった。投資信託を買うというのはセカンダリーマーケットでお金を動かしているだけじゃないか、決してお金が自分が投資した会社に行くわけではないじゃないと。それに反論できなかったところがあって、我々は卑下すべき存在なのか?それとも前向きな考えがもてるような存在なのか?」
カン・チュンド氏
「非常に意味が深い質問。何百年か前は、資力がある人が自力投資するしかなかった。セカンダリーマーケットが出来てきたおかげで、誰でも間接的に投資ができるようになった。そして、セカンダリーマーケットが出来たから資本主義はこれだけ発展してきたのだと言える。
一方で、自分で事業を起こす方々は、セカンダリーマーケットにお金を費やすが必要ない。全て自力投資で人生を全うされてもいい。これはよい悪いの問題ではなく生き方の問題。
ですから、自信を持って、セカンダリーマーケットのインデックスファンド・ETFに投資をしてください」
えんどうやすゆき氏
「あとひとつだけ質問」
お客さん
「私がバランスファンドを買い続けている理由についてご意見ください。買っている商品がセゾンバンガードでその理由が、内容が明確であったこと、低コストであったこと、新興国がちょっと含まれていることです」
(水瀬コメント:話題が鬼門に戻った…山崎氏がマイクを持った…ドキドキ…)
山崎元氏
「いいんじゃないでしょうか」
(場内、ズコーーーーーーーと大爆笑)
「中身とコストが分かって買っているということですから。素敵な投資をされているのではないか」
お客さん
「良かったです」
えんどうやすゆき氏
「これで第1部を終わらせていただきたいと思う。出演者に大きな拍手を!」
(パチパチパチパチ……)
インデックス投資という退屈なテーマで、よくもまあこれだけ面白い座談会になったものだと思います。
この第1部座談会は、時間にして80分程度の短いものだったのですが、永久保存版にしたいくらい内容が非常に濃く、また会場も多いに盛り上がりました。
それは、各出演者同士あるいはお客さんとの話が相互作用的に、あたかも化学変化を起こすがごとく、ひとりの講演では決して起こりえない新たな展開を次々引き起こしたからだと思います。
こんなためになる座談会を開いてくれた主催のえんどうさんに、あらためて感謝したいと思います。
ありがとうございました。
この後、第2部の「3分プレゼン」、第3部の「投信ブロガーが選ぶFund of the year 2008発表会」、そして打ち上げを兼ねた「第3回インデックス投資交流会」がありましたが、ここでは割愛させていただきたいと思います。
ほかのブロガーさんが記事にされていたりするので、そちらをご参照いただければと思います。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
(おわり)
「人に投資のアドバイスを求めて、アドバイスをしてくれた人から運用商品を買ってはいけない。これが大事なことだと思う。
例えば、FPなんかでも証券仲介業とかやっているとだいたい手数料の半分くらいが入るようになっているが、意見を聞くのはいいことだけれども、その人がその時間を何のために使っているのか考えた時に、やはりアドバイスが歪む可能性がおおいにある。
また例えば、退職金が振り込まれた銀行に決して相談してはいけない。銀行は、銀行員の顔を見ずに使うのがコツ。なるべくネットバンキングでお金を動かして、せいぜいATMを利用するくらいにしておく。出来るだけ銀行には行かないほうが、余計なファンドをセールスされることもないし、今のシーズンだと風邪もうつされない」(会場笑い)
竹川美奈子氏
「基本的には、どの商品がいいですかという“商品選び”から入るのはやめたほうがいい。
投資期間、投資目的、目標リターンなどの大きいところから入り、ざっくりとでも資産配分を決めたうえで、最終的に商品選びというように落としていかないといけない。大部分の人は商品選びから入ってしまうので、インド株ファンド3つと中国株ファンド3つとかでそれでリスク分散しています、みたいなことになってしまう。
商品選びからではなく全体像から入っていくということが大事だと思う」
内藤忍氏
「誰のアドバイスを聞くかは非常に難しい。結局、利害関係がなくても考え方が間違っている人もいれば、銀行員も利害関係は持っていても正しいことを言っている場合があるのが悩ましい。
ひとつ言えることは、相場が変わると自分のポリシーが急に変わってしまう人がいるが、そうなってしまわないように、自分は何を心の拠り所にしてこの先10年間やっていけるのかということをよく考えて、そこに立った投資を、相場環境が変わっても続けていくことが大事。
インデックス投資が結果的に正しいかどうかは結果論でしか分からないが、僕は基本的には、これから投資をしていって着々と続けていけばいいと思う。相場の上げ下げで投資の考え方がぶれないような投資の基本をしっかり持ってそれを続けていくことで、失敗しても後悔しない、納得感のある投資になる」
カン・チュンド氏
「人があっちのほうがいいですよ、たくさん魚が釣れますよと言っていても、後追いをしていかない。自分ひとりでも孤独でも、それを自分のなかで受け入れる大きな信念のようなものが必要。
例えば、カンさんたくさん釣れてるよ!何で来ないの!と言われても、自分が行った時にはもうリターンがなかったりする。
今どういう状況かというと、魚全然見えてない。船もまったく出ていない。誰がこんな時に魚釣りするんですか?という状況。でも、今船をこぎ出して魚釣りをし始める人にはもしかしたら大きなリターンが得られるかもしれない。
つまり、ひとりでやってもそれを怖がらないという心構えが必要」
イーノ・ジュンイチ氏
「僕は専門家じゃないので、自分の経験を話すと、始めて投資をしたのは10年前、貯金や退職金で200万円ほどあった。当時、金利が低かったので投資の勉強をして投資信託を選んだ。すごそうだと思って舞い上がり、200万円投資信託に全部つぎ込んだ。グローバルファンドとバランスファンドの2本、前者はITバブルを乗り越えられず強制償還され、後者は安定的な運用のはずだったのに何故かITバブルに乗り中身がIT銘柄ばかりになっていてその後値が下がってしまった。
僕が経験から得たのは、やはり勉強するまでは、ちょっとずつやったほうがいいということ。
でも、やってみなければ分からないということもあるので、大火傷しない程度にすこしリスクを取ってみて、後にいい投資が出来るようになった時のためにお金を残しておいたほうがいいのではないかと思う」
(水瀬コメント:山崎氏の「買い方」、竹川氏の「選び方」、内藤氏の「心の拠り所」、カン氏の「大きな信念」、イーノ氏の「残し方」、それぞれ非常に含蓄のある値千金の「べからず集」だったのではないでしょうか。聞きながら、これは書き残しておかねばと思いました)
えんどうやすゆき氏
「質疑応答の時間を設けたい。まず、私のブログで1件質問が来ていた。“海外ETFを買うのに、総合的に個人投資家にとってメリットのあるネット証券はどこですか?税金、確定申告、初心者に優しい画面かどうか等その他の視点で”」
イーノ・ジュンイチ氏
「これは最初に僕が発言していいですか?ここにいる僕以外の人間は利害関係者が多いです。会場にETFに詳しそうな知った顔がいるので、ちょっとマイクを向けていいですか?名前は言いませんが」
(水瀬コメント:抜き打ちでybさんにマイクを向けるイーノ氏)
「だめ?」(ブンブン首を振るybさん)
(水瀬コメント:抜き打ちでモンチさんにマイクを向けるイーノ氏)
「だめ?」(ブンブン首を振るモンチさん)
(水瀬コメント:抜き打ちで僕にマイクを向けるイーノ氏)
「だめ?」(ひ~~~無茶振りだ~~~!!)
水瀬ケンイチ
「い、いいですよ。水瀬ケンイチと申します。突然振られて何も考えてなかったんですけど(イーノさ~~~ん;;)。自分としては、今は海外ETFを含めたインデックス商品の過渡期だと思っているので、どこかひとつの証券会社に操を立てて一生変えないという時期ではないと思っている。なので、自分は楽天証券とマネックス証券とSBI証券の3つをアクティブに保っていて、良さそうな商品が出てきたらそれをツマミ食いしているという形でやっている。つまり、ここぞと決めないほうがいい時期だと思っている」
山崎元氏
「質問していいですか?(会場大爆笑)楽天証券はその3つで比較するとどの辺が問題か?」
水瀬ケンイチ
「悪いところですか?いいところじゃなくて」
山崎元氏
「悪いところを聞いたほうが役に立つでしょう、それは」
水瀬ケンイチ
「わかりました。楽天証券の場合は、個人的に思うことは、WEB画面の作りが非常に分かりにくくて、自分が買っているETFを見たいのにどこをクリックしたらいいのか分かりにくいというところが困る」
山崎元氏
「トップページからということですね?」
水瀬ケンイチ
「いいえ、ログインした後のページが分かりづらい」
(水瀬コメント:山崎流に、「まるで付き合うまでは一生懸命だが釣った魚には餌をやらない男性のようだ」と言おうと思いましたが、それはやめておきました)
山崎元氏
「けっこう大変な問題じゃないか。ありがとうございます」
内藤忍氏
「ついでに、マネックス証券の問題点も!(会場拍手)SBIの問題もどうだろうか」
水瀬ケンイチ
「じゃあ順番に行くと、マネックス証券の困るところは、最近まで投資信託・海外ETFの品揃えが他と比べて揃っていなかった。最近品揃えも追いついたし、手数料も最も安いので今のところいいかなと思っている。
最後に、SBI証券は海外ETFについて、コストはマネックスに負けていて、品揃えは楽天に負けているという状態で今いいところなしだが、ネット証券最大手なので今後の巻き返しに期待」
(水瀬コメント:イーノさんもお人が悪い。ひとこと事前に言っていただければ、もっと気の利いたことがいえたのに…寿命が3年くらい縮みました)
えんどうやすゆき氏
「カンさんと竹川さんは?」
カン・チュンド氏
「私はそんなに大きな差はないと思っている。一番大事なのは10年後も皆さんの窓口としてちゃんと存続しているのかということ。会社の構造的に親会社が中長期的なビジネスの方向性の変更で、証券をクローズしないとも言えない。だから、水瀬さんが言ったように複数の口座に分散しておくのはリスクヘッジになると思う」
山崎元氏
「ビジネスの構造から考えると、個人的な意見だが、例えば10年後はSBI以外はどこが消えていてもおかしくない(会場笑い)。結局、勝った一番手が非常に有利、二番手はギリギリで、三番手は生きにくい、基本的にはそういうビジネス構造。ただ、どうにかなった場合も、おそらく口座はどこかに引き継がれていくものと思われる。連続性を考えると、ネット証券もなかなか厳しい。
株式売買手数料の価格の叩き合いをやった後、その次に何で儲けていくのかというところがあまりハッキリ見えてきていない。資産残高を積み上げて、資産運用のサービス会社としてなんとかやっていけないかというのがひとつのアプローチであるが、ビジネスとしてうまくいくかどうかはよく分からなくてなかなかスリリングだと思う」
竹川美奈子氏
「基本的には、カンさんと水瀬さんと一緒で、SBI・楽天・マネックスの3社に関しては、現状にどこが一番いいかまだ決めかねている状態。これから、手数料体系、商品構成、特定口座に入れられるようになるかどうか等、サービスを見極めていく時期。情報公開もちゃんとしていただきたい。
ETFの品揃えに関しては、国内ETFより海外ETFが有利な状況でこの3社でどこが一番有利かという話になるが、例えば、東証に、先進国に幅広く上投資するような海外ETFを並行上場したらどうなるのかと言ったら、この3社でどこがいいかというより、国内株の取引をするにはどこがいいかという発想で、証券会社の世界地図が塗り変わる可能性がある。ただ、現状では厳しいと思うが」
カン・チュンド氏
「ちょっといいですか。今竹川さんが仰ったことは非常に重要で、海外ETFは現在の選択肢としては重要だが、これはあくまで過渡的な流通形態だと思っている。というのは、本来的には日本国内の取引所で、円建てで、多種多様なETFが品揃えされるというのが目指すべき完成形。そういう意味で言うと、海外ETFというのも過渡的な現象であると長い目でみると言える」
(水瀬コメント:カン氏は国内市場への海外ETF並行上場が目指すべき完成形としています。僕も一応そう考えているのですが、懸念点もあります。それは日本というローカルマーケットにおいて多種多様なETFが上場された場合、流動性不足による価格形成の歪みが問題にならないかということです。買いたい時に割高なETFを買うのは嫌ですし、売りたい時に割安に売るのも嫌です。
香港市場でもやっているのだから大丈夫と考えるか、やはり本場の市場(米国や欧州)で売買したほうがよいと考えるか、人によっては意見が分かれるところだと思います)
えんどうやすゆき氏
「他に特に聞いておきたいことがあるかた?」
お客さん
「伝統的アセットクラス以外の金融商品を考えているが、グローバルREITについてお聞きしたい。山崎さんや内藤さんの著書でREITには不透明な部分があったので、投資を控えていたが、グローバルREITについても同じような問題は抱えているのか?」
内藤忍氏
「問題というのは具体的にはどういうことか」
お客さん
「利益相反など」
内藤忍氏
「もちろん、実際にあるかどうかは別として、そういう可能性がある仕組になっているとは言える。問題がなかったと仮定しても、そもそも不動産に投資をする意味があるのか、その分株にした方が効率性から考えて得策なのではないかという話はある。正直、よく分からない部分があるので、グローバルREITはインデックスファンドに自分でも投資をしている。信託報酬が安ければMAX10%くらいは入れてもいいんじゃないかと思っている」
山崎元氏
「アセットクラスとしてのREITはあってもいいと思っている。それは、不動産の場合は資本としてお金を出して、そこに何らかの生産活動があって、そのメリットが取れるというのは株式と同じような意味で、リスクに対するリターンが形成されるはずの資産だと言える。
ただ、当初REITがかなり怪しかいものであったとも言える。不動産会社から見ていらない物件をREITに売るという不透明さはあった。それでも商品が出た時に一応成功させたがってたから、最初はいいものを詰め込んだが、今は不動産価格が崩れてREITもひどいことになっている。
一般論として、どういう性格のリスクとリターンがあるのかよく分からない投資家が多いだろうから、無理に持つ必要はないが、アセットクラスとして考えると、持つ事があってもいい。それから、現在の不動産市況が面白いのかということがあるが、そろそろ面白くなってきたと言えると思う。不動産をバルクで買ってきて後から処分して儲けられたのが99年のタイミング。そういう意味では、収益不動産の底がそろそろ入りつつある。ただ、まだ不動産会社のバランスシートを見ると、売ってしまうと損が出て債務超過になってしまうので売れない状況。売りたい物件を売れない最終段階ということ。REITで変なレバレッジがかかっていないものでディスカウントになっているものを探すことが出来たら、日本のREITについて投資チャンスはあると思う。
たまに八百長があるかもしれないが、競馬は楽しいというかたは、買ってもいいんじゃないか」(会場笑い)
(水瀬コメント:山崎氏は質問の主旨(グローバルREIT)から離れ、日本REITについて詳細に答えており、ちょっと質問者は困惑したかもしれません。流れで話がいろいろ転んでいくのは台本のない生ライブのいいところでもあり、ちょっと困ってしまうところでもあります。個人的には、面白かったし参考になっちゃいましたが(^^ゞ)
えんどうやすゆき氏
「他には?」
お客さん
「投資1年の初心者だが、以前友人と話していて、彼は自営業で自分で会社を作った人間だが、議論で負けてしまったことがあった。投資信託を買うというのはセカンダリーマーケットでお金を動かしているだけじゃないか、決してお金が自分が投資した会社に行くわけではないじゃないと。それに反論できなかったところがあって、我々は卑下すべき存在なのか?それとも前向きな考えがもてるような存在なのか?」
カン・チュンド氏
「非常に意味が深い質問。何百年か前は、資力がある人が自力投資するしかなかった。セカンダリーマーケットが出来てきたおかげで、誰でも間接的に投資ができるようになった。そして、セカンダリーマーケットが出来たから資本主義はこれだけ発展してきたのだと言える。
一方で、自分で事業を起こす方々は、セカンダリーマーケットにお金を費やすが必要ない。全て自力投資で人生を全うされてもいい。これはよい悪いの問題ではなく生き方の問題。
ですから、自信を持って、セカンダリーマーケットのインデックスファンド・ETFに投資をしてください」
えんどうやすゆき氏
「あとひとつだけ質問」
お客さん
「私がバランスファンドを買い続けている理由についてご意見ください。買っている商品がセゾンバンガードでその理由が、内容が明確であったこと、低コストであったこと、新興国がちょっと含まれていることです」
(水瀬コメント:話題が鬼門に戻った…山崎氏がマイクを持った…ドキドキ…)
山崎元氏
「いいんじゃないでしょうか」
(場内、ズコーーーーーーーと大爆笑)
「中身とコストが分かって買っているということですから。素敵な投資をされているのではないか」
お客さん
「良かったです」
えんどうやすゆき氏
「これで第1部を終わらせていただきたいと思う。出演者に大きな拍手を!」
(パチパチパチパチ……)
インデックス投資という退屈なテーマで、よくもまあこれだけ面白い座談会になったものだと思います。
この第1部座談会は、時間にして80分程度の短いものだったのですが、永久保存版にしたいくらい内容が非常に濃く、また会場も多いに盛り上がりました。
それは、各出演者同士あるいはお客さんとの話が相互作用的に、あたかも化学変化を起こすがごとく、ひとりの講演では決して起こりえない新たな展開を次々引き起こしたからだと思います。
こんなためになる座談会を開いてくれた主催のえんどうさんに、あらためて感謝したいと思います。
ありがとうございました。
この後、第2部の「3分プレゼン」、第3部の「投信ブロガーが選ぶFund of the year 2008発表会」、そして打ち上げを兼ねた「第3回インデックス投資交流会」がありましたが、ここでは割愛させていただきたいと思います。
ほかのブロガーさんが記事にされていたりするので、そちらをご参照いただければと思います。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
(おわり)
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